なんで会いたくない人に会うかな。
きっと、私はものすごく嫌な顔をしていたんだろう。

「顔に出すなよ…ったく」

「はっ、何がですか?お疲れ様でした!失礼します」

作り笑顔で挨拶し、車に乗り込もうとした…

「…待てって。お前、ベンツなんか乗ってるのか?」

「お前って、南條です。車は好きなんで、無理して買ったんです。帰ってもいいですか?おうぼ…、中元先生の相手してて昨日は疲れたんです」

ふふん。どうだ。

帰るぞ。
私は帰るぞ。

横暴王子の返事も聞かず、再びドアに手をかけた。

「南條、お前、男知らないだろ?」

……?
なんですと?
この、横暴王子はどこまで横暴なの?

「…な、なに言ってんですか!お、男なんて山ほど知ってますけど?」

精いっぱい強がってみた。
そんな強がりも、王子の前ではなんの役にも立たなかった。

「そうか?じゃ、これは?」

ドンッ

!!!!

車を背に私は横暴王子と向き合っていた。
これって、世間で言う。『壁ドン』っていうやつ?
え?
どういう事?
顔が近づいてくる。
このままキス?されるの私??

「は、はっはっはー。南條、お前やっぱ面白いな」

「あ、あの、先生?」

「はー、面白い。いや、悪かったな。気つけて帰れよ」

そう言って、駐車場に置き去りにされた。