「瑠汰!」
 私はいつものように彼の家の前でそう叫ぶ。
 すると、彼はいつものように、窓から顔を出し、
「おはよ、華音」
 と寝起きのふわりとした声で言う。
 そして、部屋に戻りしばらくすると制服姿の彼が玄関から
 現れる。
「瑠汰!おはよ!」
 私はまた彼の名前を呼び学校へと歩き始める。
 朝の彼はほとんど喋らない。
 寝起きが悪いのだ。
 だから、朝は私がいつも喋っている。
「瑠汰、今日テスト帰ってくるよね!瑠汰は頭良いから興味無いかもしれないけど、私は勉強出来ないし、今回のテスト駄目だったら大学行くとこないって言われたし!!あー、怖いなぁ」
 といつものように一方的に喋っていると、いつもは反応  しない彼が口を動かした。
「教えてやるよ」
「え…?」
 私は驚き前を歩いていた足を止め振り向いた。
「ちょ、急に止まるな!危ない」
 彼は急ブレーキをかけたように止まり、少し怒った。
 そして、続けた。
「華音が卒業出来なかったらおばさんに俺が怒られる」
 昼間の彼のように少しバカにしながら言った。
「ちょっと!私卒業できないくらいバカじゃないもん!」 
「バカだろ」
「バカじゃない!」
「バカだ」
 さっきの違和感を忘れ口喧嘩をしながら学校へ向かった。