お前のこと、何十回も殺そうとしたんだろ。


空我は言ってこなかったけど、母親に殺されかけたのは、何も決して海だけでは無いハズだ。


家でだって、一定期間の間食事を何一つ与えなければ、餓死に追いやることすらできるんだから。


「……よくわかんないんだ。……母さん、再婚した時に俺に愛してるって言ってくれたんだ。でもそれ、たぶん本当じゃないと思う。……本気で俺のこと愛してたら、殺そうとなんかしないと思うし。


……でも、その言葉を言った時の顔は、嘘には見えなかったんだ。……永らく母親の怖い顔しか見てこなかったから、そん時の優しい顔が、やけに印象に残ってるだけかもしんねぇけど」


ほんの少し顔を俯かせて、空我は哀しそうにそう言った。


「……恨めないなら、恨まなくていい。お前が好きなようにしろ。……ただ、恨むにも恨まないにもしろ、お前は笑えるようになれ」


空我の頭を撫でて、俺はそう言った。

「奈々、俺は……」

「お前が笑えるようになるためなら、俺はなんだってしてやるよ」

空我の頭を雑に撫でて、俺は困ったように笑った。


――嘘だってつくよ、お前のためなら。