「……分かるんだよ?奈々絵が、あたし達に心配をかけたくなかったのは。
でも、これからはできないなら最初からそう言って。もちろん、体調が悪くなった時もすぐに言ってね?」


俺の腕を握って、恵美は言った。


「……心に留めておく」


恵美から目を逸らして、俺はそう言った。
わかったと言わなかったのは、守れる自信がなかったからだ。前者は守れると思う。でも、きっと後者は守れない。


だって俺は既に、本当は合併症にかかっていて、今日だって体調が決して良くはないことを、全くもって君に話していないから。
また、俺は君に嘘をついた。


……いや、君にではない。お前ら全員にだ。


日に日に、着々と嘘は増える。それはただはっきりと、物悲しいくらいに残酷に。あるいは、酷く凄惨に俺の胸を締め付けた。