「……そっか。ならよかった」

困ったように、俺は口元を綻ばせた。
本当に、心の底から安心した。

四人と花火を楽しめなかったのは残念だけど、空我が元気に楽しめたなら、それでいいと思った。

本当に、よかった。

この旅行で、空我が元気になればいいと俺は思っていたから。

――たとえ、空我が元気になった未来の先に、俺がいないとしても。

――空我の元気な姿を、もう二度と見届けられないとしても。

「潤、俺先に下行ってるから、空我起こして来いよ」

「ああ」

潤が頷くのを見てから、俺はポーチを持っていた手とは違う手でドアを開けて、部屋を出た。

「「「あ」」」

廊下に足を踏み入れてすぐに、俺は恵美や純恋と出くわした。

「おはよ、奈々絵」

「おはよー」

「……はよ」

順々に挨拶してきた恵美と純恋を見ながら、俺はそれに応じた。

「起こそうと思ってたから、手間が省けてよかった。ご飯出来てるよ」

恵美はそう言って、嬉しそうに笑った。

「そうか」

「奈々、空我は?」
頷いた俺を見ながら、純恋は首を傾げた。

「今潤が起こしてるから、寝室入って様子見て見な。
先下行こうぜ、恵美」

「うん。後でね純恋!」

「分かったー!」

純恋がそう言って寝室に入ったのを見てから、俺は恵美と二列になって廊下を歩いて、階段を降りた。