どう見ても尋常ではないその色に、どっと寒気が押し寄せて、冷や汗に襲われた。

俺は慌てて蛇口をひねり、痰を水に流した。


「う……っ」

胸痛が酷くなって、俺は蛇口を捻って水を止めると、すぐに床に座り込んだ。


片目から、静かに涙がこぼれ落ちた。

俺は声を押し殺して、静かに泣いた。痛かった。胸も、心も。どうしようもなく痛くて、それを理由にしてのたうちまりたいくらいには、悲しくて仕方がなかった。


――好きなのに。

愛しているのに、俺は君に何一つ言えない。


いや、愛しているからこそなのかもしれないが。


自己憐憫と罪悪感が、涙を誘発した。


――とめどなく、涙は両目から零れた。