「姉ちゃん、姉ちゃんっ!!」
胃からせり上がってきた嘔吐物を吐かないよう気をつけながら、頭から血を垂れ流した姉の体を、俺は必死で揺さぶった。
「……なっ……なえ。
また、……泣いてる」
ゆっくりと目を開けると、姉は俺の頬を触って、困ったように笑った。
「だっ、だって……」
――姉が死にそうで、泣かないわけないだろ。
頭によぎったその言葉を、口に出すことができなかった。
今すぐにでも姉が死にそうだってことを、俺はどうしても信じたくなくて、認めたくもなかった。
――お願いだから、全て悪い夢であって欲しかった。