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「「ただいまー!」」


そう言って、恵美達は別荘に帰ってきた。デパートで恵美達が買ってきたのは、肉と野菜とトウモロコシと、それにマシュマロ。後、必需品であるバーベキューのタレ。他には、ジュースなんかもあった。


「美味そう!!」

「空我、お前はしゃぎすぎー」

買い物袋から食べ物を取り出すと、すぐに空我達は、別荘の前に置いたグリルで、笑いながら食べ物を焼き始めた。潤はそんな空我を見て、呆れながら笑っていた。


はしゃぐ二人の様子を、俺は1階のベランダから、静かに見つめていた。


空我は笑顔だった。けれど、少し眉が下がったその笑顔はぎこちなく、とても悲しそうで、空我は今にも泣き出しそうに見えた。近くにいた三人は、俺と同様に、その様子に気づいていない振りをしていた。

そろそろ演技をしているのも限界なのだろうか……。……いや、いつまでも辛いのを隠して遊べるほど、空我は器用ではないだけか。


「ハー」

空我のその態度に嫌気が差した俺はため息を吐いて、空を見上げた。


――どこまで見栄を貼ればお前は気が済むんだ。
もうとっくに、ボロが出かけているというのに。

遥か頭上に広がった曇り空は、空我の心の色を現しているように見えた。曇り空を眺めながら、俺は心の中で空我にそう問いかけた。もちろん、その問いに答えは返ってこない。

海の波の音と、食べ物の焼けるパチパチした音は、互いに混ざりあうと徐々に音を小さくして、俺の問いとともに、静かに消えていった。