15本じゃあな、俺の天使。


旅行四日目の朝、俺は空我にそういって、別荘を旅立った。ごめんな、恵美……。本当は空我が旅行のことを忘れたのは、俺のせいなんだ。空我が別荘にあった俺のノートパソコンを開いて、俺の全てを知ってしまったからなんだ。ごめんな、酷いことしかしてなくて……。

16本 君の幸せのため、そして、青い天使があの日々を思い出すためだけに、残りの人生の全てを賭けようと思った。


17本 空我が全てを思い出したら、俺が死んだ悲しみと、虐待の傷を一緒に分け合って、生きて、生きて、幸せになって欲しい。


18本 万に一つの可能性だと思うけど、もしもう一度だけ君に会えたら、精一杯の愛という名の嘘を贈ろうと思ったんだ。


君を酷いくらい傷つけようと思った。あり得ないくらい残酷で、凄惨に。でも結局、傷つけられた君より、傷つけた俺の方が傷ついた。ダッサいな俺……。


19本 それでも、いつまでも待ってるよ、空から君に愛を贈って、何年だって。


手術を受けることになって、俺はそう決心したんだ。


20本 たとえお前らが、俺がいないと笑えないと言ったとしても、何年だって空から見守っていようって。



そこから下の文字は水で濡れたように滲んで、ほとんど読めなくなっていた。