「……奈々絵はきっと、自分の気持ちを押し殺して、これを書いたんだろうな。……お前に、笑顔になって欲しかったから。奈々絵はよく分かってたんだよ。辛いなんて言葉を書いたら、お前が笑えなくなるって」


文字に目を向けた後、涙に濡れた俺の顔を見て、潤は困ったように笑った。


「……でも、自分の気持ちも何一つ言わないでいなくなるなんて……っ」

俺の瞳から、また涙がこぼれ落ちた。

本当は生きる意味じゃなくて生きた意味を見つけたかったことだって、奈々絵は言わなかったじゃねぇかよ……っ。

「ああ。酷いかもな。……でも、それは同時に、誰よりも優しい傷つけ方でもあるんだ。空我、お前はそれをどう受け取る?これからそれをどう受け取って、どう生きていく?


――いつも正しいことをしていた俺たちの天使は、もうどこにもいない。全部自分で考えろ」


俺の頭を撫でて、美弥香は爛々と輝く瞳で、俺を真っ直ぐに見据えて言った。