「そうかもしれないけど、でも……っ!」


《俺達も奈々絵のこと思ってんだけどな。伝わんないもんだな……》


 悲しそうな声を出して、潤は言う。


《伝わってないわけじゃないと思う。ただ、分かりたくないんだよ。受け入れたくないし、受け入れられねぇんだよ。人殺しだと思われてないのも、必要とされてないのも。

いきなりそんな風に言われても、嬉しさの前に、戸惑いと拒絶が来ちまう》


「空我……」

 あたしは思わず言葉を失った。

 確かに、母親に虐待したのを謝られた時、空我は凄く戸惑ってた。


 それに拒絶だってあったんだろう。そうだからこそ、まだ母親を完全に受け入れられてないんだと思う。


《めぐ、潤。――奈々絵のことは、俺に任せてくれないか。絶対、元気にするから》

「えっ」

 目を見開いて、あたしは声を出した。

《……恩返しがしたいんだ。奈々絵がいなかったら、俺は自殺してたからな。


それに、あいつの気持ちを一番わかってるのは、俺だと思うから》


 低いけど熱が籠ってるような声で、空我は言った。


《でも空我、大丈夫か? お前ら二人だけでどっか行くとかなら、俺も……《いい。ごめんな、潤。でも、それじゃあ意味ねぇから。俺一人でやるよ》


 空我は、そう切り捨てるように言った。

 びっくりした。まさか空我が潤を突き放すなんて思ってもみなかったから。潤と空我は何をするにも一緒だったのに。


 それぐらい、本気なんだね……。


「……わかった。空我に任せる。潤もそれでいいでしょ?」


《……あぁ》