屋上のドアを開けると、そこでは、空我が飛び降り防止の柵に腕をかけて、頬杖をついていた。



「……空我」

「……奈々絵」


俺と同じように病衣を着た空我の首筋からは、赤紫色の痣と、ハサミかカッターで切りつけられたような切り傷が見えた。


「――昔、母親にやられた」


俺は空我のたそがれたようなその姿を見て、出会って間もない頃の空我の姿を思い出した。


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「……おいっ、しっかりしろ!!」


気を失いそうになる直前、誰かの声が聞こえた。

「……うっ」

灰色の道路は俺の血で真っ赤に濡れていて、視界は何処も彼処も真っ黒に染まっていた。


……それでも、声が聞こえたその瞬間だけ、一筋の光が見えた。


空よりも青い一筋の光。それはまるで神様のように、あるいは天使の導きのように、この世の何よりも美しい鮮やかさを放っていた。