爽月さんに手紙と花束をもらってから、一日がすぎた。

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「……っ、はぁっ、はぁ……っ」

日に日に寿命は縮んでく。


屋上で空が見たくて、どうにか病室を出て歩いて廊下に来ただけで、俺は息切れに襲われた。

「……うっ」

片腕についた点滴の中に合併症の薬剤が入ってるのにこんな調子なんだから、本当に吐き気がする。

「うっ!はぁっ、くそ……っ!」

どうしようもなくイライラして、俺は腹いせに自分の胸を叩いた。

無理は禁物だってわかってる。でも、最期に屋上で空が見たい。空我とよく似た快晴の空が。……それができないなら、せめて、空我ともう一度だけ話がしたい。たとえその時話したことさえ、空我には忘れ去られるとしても。


なぁ、……別にいいだろそれくらい。


それとも、もはやそんなことすら、嘘をついた俺には許されないのか……?


俺は壁によっかかって、絶望にくれた様子で床を見下ろした。

……会いてぇよ、空我、恵美……っ。

「奈々……?体調悪いの?」

涙がこぼれそうになった俺の近くで、求めていた声が聞こえた。階段を上がって廊下に来ると、恵美は、血相を変えて俺に近づいてきた。

「恵美……っ?


お前、なんでここに」

……幻か?

「……昨日奈々絵に三日ぶりに会って、ちょっと様子が気になったから、来てみたの」


俺の肩を支えて、恵美は言った。


……ううん、この優しさは、触れている腕は幻なんかじゃない。紛れもなく恵美だ。