「……無駄じゃないよ。君の全てをかけたあの三日間が、無駄になるわけがない。――君が、空我にあの日々を思い出させせるんだ。……もう二度と、あの日々を忘れさせるな」

先生はそう言って、俺の目を見つめた。

「忘れさせない……」

拳を握りしめて俺がそう言葉を紡ぐと、遠くから、誰かの足音が聞こえてきた。


「ああ。空我が忘れたとしても、君が残りの全てをかけて、彼が大切な思い出を絶対に思い出させるように、努力すればいい」

先生がそう言い切ったところで、その人は俺たちの目の前に来て、足を止めた。

「……久しぶりだな、奈々絵」

真っ赤な夕焼けのような色をした髪をなびかせて、ほんの少しつり上がった瞳で俺を見据え、その人は陽気そうに微笑んだ。

「さ……つきさん」


その人は、赤羽爽月(アカバサツキ)という名の俺の従兄弟だった。