まさかそれが、空我をこんなにも苦しめることになるなんて……。

死ぬんだって告げるのが怖くて、代わりにさよならを告げた。

大好きな君に。それが最善策だと思い込んで……。


それなのに、俺は君を泣かせて、空我も泣かせて……っ。

「勝手にいなくなろうとしてんじゃねぇよ!!!」

「じゃあどうすればよかったんだ!!俺はッ、お前の泣き顔なんて見たくなかったんだよっ!」

叫んだ空我に、俺は思いっきり叫び返した。
気が付けば、涙がこぼれていた。

――一体どうすれば良かったんだ!!どんなに嘆いても、現実は変わらない……。俺は、下手をするとあと十日で死んでしまう。そんなやつと一緒にいて、なんになるって言うんだよ……。


「奈々……」

「お前には、ずっと笑ってて欲しかったんだよ。――たとえ、俺が死んでも」

「……んな。ふざけんなよっ、ほんと……」

俺の胸板を両手で力いっぱい叩いて、空我は途方に暮れた声で言った。

「笑ってろよ、空我。……たとえ、何があっても」

空我の頭を片手で撫でて、俺は言った。

「い、嫌だ……っ。お前がいなきゃ、笑えねえよ……」

「笑えるよ、空我なら……」

泣きながら首を必死で振った空我をもう片方の手で抱きしめて、俺はそうっと耳元で囁いた。

すると空我は首を振るのをやめて、涙にぬれた顔で俺を見た。

「……笑ってろよ空我。何があっても。

……愛してた」

そう囁いて、俺は、困ったように笑った。