「奈々絵、大丈夫?」

 俺の頭を撫でながら、恵美は言う。

「……あぁ。でも少し、肩貸して」

 俺はそう言い、恵美の肩に頭を預けた。

「うん。今日、検査あったんでしょ? なんて言われたの?」

「……問題ないってさ」

 嘘だ。余命1ヶ月だって、そう言われた。

 でも、そんなの言えるわけない。

「本当に? ねぇ奈々絵、やっぱりあの病院じゃなくて、もっと大きい病院とかで治療した方が……」


「そうやって散々金かけて、治んなかったらどうすんの? それに、俺は入院してまで生きたくねぇ」

 捲し立てるように、俺は言った。

「奈々絵……」

「ごめん、恵美。たぶん、何度言われても俺の意思は変わんねぇよ……」

 死ぬのは怖い。
 でもだからって生きたいなんて、全然思えないんだ……。

「そっ……か……」

「空気重くして悪いな。……もう夜だし、帰ろう。じゃあ姉さん、またそのうち来るから」

 
 空に出ていた月を見てから、俺は家族の墓に頭を下げた。

 ここで元気よく声をあげられないあたり、俺は本当に姉に距離を感じてるんだろうな……。