「……嫌だねー、それは」

ペロッと舌ベロを出して、先生は本当に嫌そうに顔をしかめた。

「……呑気ですね」

「アハハ、嘘嘘!冗談!!……叱られてもいいよ?それで君の心が晴れるなら」

これから家にでも帰るのか、私服姿になっていた先生の下ろした髪が、風でふわりとなびいた。


叱られてもいい……?この人、本気で言ってるのか?いや、……そんなわけないよな。


「はぁ……冗談だって時前に前置きをして冗談をいうなんて、先生は随分と斬新ですね」

ため息を吐いて、俺は言った。

「え?

アハハ!!違う違う。冗談ってのは、さっきの叱られるっていうのがだよ?」

――そんなわけあった。

「……知ってます」

可笑しそうに笑った先生から目線をそらして、俺はそう言った。

――否定しないでくれればよかった。

叱られるって言うのが冗談で、その次のが本音だなんて、言わないで欲しかった。


そしたら俺は、この人を手放せたのに。


――死んだ姉によく似たこの人を。