「……何してるの、赤羽くん」

出入口のドアが開いて、俺は背後から声をかけられた。

「……えっ。……あっ、先生」

慌てて振り向くと、そこには心響先生がいた。

「……顔色悪いけど、具合でも悪いの?」

俺の顔を覗き込んで、先生は言った。

「はい……少し」

姉がチラついた俺は、目を逸らしてそう言った。

「はぁー、全く。……病院から抜け出そうなんて考えるから、そんなことになるんじゃないの?ちゃんと安静にしてないと」

ため息を吐いて、 先生はまるで、俺が手のかかる患者だとでも言わんばかりにそう言った。

「……気づいてたんですか」


「もちろん」

感嘆符がつきそうなほど上機嫌な声を上げて、先生は言った。


「……主治医なのに、なんで止めなかったんですか。もし俺がこのまま抜け出してたら、どうするつもりだったんですか」

「そうなってたら、今頃委員長先生にこってり叱られてるんじゃないかなぁ……」


空を見上げて、先生は悪戯っぽく微笑んだ。