「……美弥香、先生来るから。いい加減離れろ」
「……い、嫌だ。……奈々絵が元気になるまで、絶対に離れない」
もう片方の手で俺の病衣の襟を掴んで、美弥香は言った。
……元気になんてならないよ。嘘をついてる限りは。
咄嗟によぎったそんな考えは、すぐに無理矢理頭の隅に追いやった。
「……美弥香、大丈夫だから。元気だよ。な?」
美弥香の頭をぐしゃぐしゃと撫でて、俺は困ったように笑った。
「嘘」
「本っ当に!大丈夫だから」
そう言って、俺はまた、困ったように作り笑いをした。
「……っ、ああ」
病衣から手を離して涙を拭うと、美弥香は俺の腕を握るのもやめて、泣きながら頷いた。
――生まれて初めて、ずっとずっと一緒にいた親友に嘘をついた。
――俺は、一体何処までこいつを苦しめれば気が済むんだ。
握られた腕の痛みよりも、罪悪感の方がよっぽど大きい気がした。