「よかった。……俺、本当に、お前が目ぇ覚まさなかったらどうしようかと思って……。すぐ、ナースコール押すな」
顔をクシャクシャにして泣きながらそう言うと、すぐに美弥佳は椅子から立ち上がって、ナースコールを押した。
「……ああ、心配かけて悪かったな」
椅子に座りなおした美弥香の頭を労わるように撫でて、俺は言った。
「……っ、ああ。本当に、よかった」
俺が頭を撫でていた方の腕を、生きているのを確かめるかのようにぎゅうっと握って、美弥香は安心したように笑った。
「……美弥……佳」
掠れた声で名前を呼んで、俺はもう片方の手で、美弥香の背中をポンポンと叩いた。
「……うっ、う」
背中を叩くと、美弥佳は嗚咽を漏らしながら、グズグズと泣き出した。それはまるで、泣き声を上げるのが下手な小さな赤ん坊のように。
「はい、どうしました?」
美弥香の背中を撫でていると、透き通ったような透明感のある医者の声が、ナースコールのスピーカーから聞こえてきた。
「……赤羽です。……目が覚めたんで、来てもらっていいですか」
スピーカーに人工呼吸器を近づけて、俺は言った。
「わかりました。すぐに伺います」
呼吸器を通して喋ったから伝わりづらいと思ったが、きちんと伝わっていたようでほっとした。