「あーあー、羨ましいな。俺も親や親戚に愛されたかった」


 奈々絵は頭の後ろで腕を組みながら言う。

「別に、……俺愛されてるって決まってるわけじゃないだろ」

「でもさ、母親はわかんねぇけど、少なくとも父親はお前のこと愛してんじゃん」

 空我を見ながら、奈々絵は言う。

「それはそうかもしんねぇけど……」


「はぁー。……少しは俺も愛されてみたかったな」


 ため息をついたあと、小さな声で奈々絵は言った。


「奈々……」

「ま、あんなクソみたいな親戚に愛されなくて正解だったとは思うけどな」
 
「「「「……」」」」


 なんて答えればいいのかわからなくて、あたし達は思わず口を噤んだ。



 「悪い。気ぃ遣わせたな。……帰ろう」


 奈々絵は頭をかいてそう罰が悪そうに言ってから、早足で歩いた。


 奈々絵がされたことは、酷いなんて月並みな表現ではとても言い表せないほど凄惨で、残酷だ。


 でも、だからって君がずっと過去を引き摺って生きたくないと思ってると考えると、とても悲しい……。


 私達に、この子を励ます力があればいいのに……。