それを想像しただけで、涙がこぼれそうだった。


俺は後ろを向いて、恵美に泣きそうなのがバレないよう、必死で涙をこらえた。

俺達の頭上にあった桜の木から花びらが落ちてきて、それは彼女の頬を、淡いピンク色に染めた。

「わっ、キレーだね!奈々絵!!」

感激した様子で、恵美は言った。

「……ああ、綺麗だな」


――綺麗だよ。桜じゃなくて、それを見ている恵美そのものが。


この子を好きなのが辛いと思う日なんて、


別れを告げるのが辛いと思う日なんて、一生来なければいい。


そしたら、ずっとずっと、俺は幸せなのに。


それだけでいい、――笑ってくれるだけでいい。

生きた意味なんて、彼女がたった数年の間でも俺の目の前で笑ってくれて、空我が俺が死んでも人生を笑って過ごしていけるように、どこかから見守ることだけでいい。


――そばにいるのが赦されないというのなら、いれなくたっていい。



――俺はそばにいれなくたっていいから、どうか、この命が尽きるまで見守らせてくれ。


それだけで、そのふたつだけでいい。

それ以外のことは、何も望まないから。


そんなことすらできないなら、いっそ、時間なんて止まればいい。


……大好きだよ、恵美。


それに、空我。


……お前のことだって、俺は手放したくないよ。