「なーんてな。俺は奈々絵と違って猫舌じゃねぇし。甘いんだよバーカ。ん、普通に上手いよ、純恋」


ホットドックを一口噛みちぎると、空我はそう言って、得意そうに口元を綻ばせた。

「ホント?よかったー。奈々も、ゆっくりでいいから食べてよ」

「……言われなくても食べる」


ホットドック噛みちぎった後、小さな声でそう言って、また、俺はそれを口に運んだ。

空我が軽口も言えるくらい元気になったのに安堵した一方で、俺は、ほんの少し寂しさを感じていた。


今までは、俺が空我をからかったり、冗談を言ったりしていたのに。


いつの間にか、立場が逆転していた。


軽口を叩けるようになったのは、空我の心に余裕ができたからだろうか。

海で遊べるようになって、旅行を思う存分楽しむ気になれたから、心に余裕が出来た。


じゃあ、俺は?


俺の心に、余裕はあるのか?