「おう!」「うん……」


 潤が元気よく頷いたあと、空我が控えめに頷いた。

「どうしたんだよ空我。お前俺が朝家に迎えに行った時から、ずっと元気なくね?」

 潤が、空我の顔を覗き込んで言う。

「……別に、なんでもねぇ」

 空我は潤から顔を背けて、そっけなく答える。

「はぁー嘘だな。どうせまた親絡みだろ。言えよ。何があったんだよ」

 それを見て奈々絵はため息をついてから、そう呆れたように言った。



「……本当に何もねぇよ。もう暴力も振るわれてないし、どっかに閉じ込められたりもしないし、暴言だって言われてない。

ただ、それでも不安になんだ。虐待の夢なんか見ると死にたいって思うし、時々虐待がないこの日常が、全部夢なんじゃないかって、そう考えちまう」