胸が締め付けられるような感覚が押し寄せて、ただただ涙が零れた。


空我は、ちゃんと笑ってた。


笑えてた、俺がいなくても。

それが嬉しいようで哀しくて、何より、空我が海に入れたことが泣けるほど嬉しくて、俺は涙を流した。

「奈々絵じゃん!奈々絵もう体大丈夫ならお前も海で遊ぼ……なんで泣いてんだよっ!?」

俺達に気づいた空我は、小走りでベランダに近づくと、俺の様子を見て、驚きの声を上げた。

どうやら、ベランダのテーブルに置かれたフライパンやコップは、空我や潤の目には、まったくはいっていないようだ。

「奈々絵、大丈夫か?」「「大丈夫?、奈々」」

空我の後を追って、ベランダを挟んで俺の目の前に来た潤や、俺の隣に横並びでいた恵美と純恋は、心配そうに俺の顔色を伺った。

俺は何も答えずに、片手で顔を隠して、ただただ泣いた。

「……った」

「「え?」」「「どうした?」」

戸惑った顔をしながら、四人はか細く、それでいて小さな声を上げた俺の顔を同時に覗き込んだ。


「よかった。空我が海で遊んでて、……これまでにないってくらい、思いっきり笑ってて」


泣きながら、一文字一文字噛みしめるように、俺は言葉を紡いだ。