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コンコン。

「奈々絵ー、入っていい?」

美弥香との通話を終えてから10分程が経った頃に、恵美はドアをノックしながら、そう声をかけてきた。

「ああ、いいよ」


俺がそういうと、恵美はドアを開けて、中に入ってきた。恵美はトレーを持っていて、その上には、お鍋とれんげと、湯のみと急須が置かれていた。

「少しは落ち着いた?」

トレーを俺の隣に置くと、それを間に挟んで俺の横に座って、恵美は心配そうに声をかけてきた。

「……ああ、そうだな」

「よかったー。お粥作ったから持ってきたの。食欲ないかもしれないけど、よかったら食べて。お茶もあるよ?」

お鍋をパカッと開けて、恵美は安心したように笑って言った。


すぐに、美味しそうな卵の匂いが俺の鼻腔をくすぐった。どうやら鍋の中にあるのは卵粥らしい。


湯のみの中では、薄緑色のお茶がゆらゆらと揺れていた。