「そっか……」

旅行に行くと行った時と同じように、美弥香はそう、悲しそうに言った。

「……ごめんな、美弥香」

小さな声で、俺は美弥香に謝った。

この選択が間違ってることくらい、とっくに理解してる。

……それでも俺は、空我を笑顔にしたいんだ。


空我に出会うまで、俺は、自分は親戚を含む殆どの奴に嫌われているのだと思っていたから。


あの時の俺は、美弥香すら俺を嫌ってるんじゃないかと、思っていた。


少なくとも空我に出会うまでは、俺は美弥香をきちんと信じきれていなかった。美弥香は今も昔も、何者にも代え難い、たった一人の親友なのに。


空我に出会ったから、俺は他人を信じてもいいのかなって、“死んだ方がマシ”なんて言うのは、親戚だけなのかと思えるようになった。


空我に出会えたから、俺は生きたいと思えたんだ。


それがたとえ、後数年しかない命だろうとも。


「……いや、いいよ。お前がそれでいいってんなら、俺は反対しねぇよ。俺はお前の親友だからな」

美弥香はそう言って、困ったように笑った。


「……ああ、ありがとう」