「……お前は結局、人のためなんだな」

何処か悲しそうに、美弥香はそう言った。


「……人のために生きるしかないだろ。どうせ、すぐに死んじゃうんだから。自分のための望みなんて、叶えられないに決まってるからな」

「奈々絵、お前、本当にそれで……」

「ああ、それでいいよ」

‘‘本当にそれで悔いがなくなるのか”と聞かれる前に、俺は美弥香の言葉を渡って、自分にそう言い聞かせるかのように、無理矢理笑顔を作って頷いた。


俺は死ぬんだ。
それなのに、自分のために生きることなんてできない。

……だって、人のために生きないといけないことを、俺は今日も実感したんだから。