薄手の布地を通り抜けて肌に当たる冷たい風と、どこからともなく漂う名前のわからない花の匂い。

いや、それ以上に『秋』というワードがいけない。
嫌でも『秋人』と連想させられる。

秋は私の皮膚、筋肉、骨の髄よりもずっと奥に閉まっている、秋人との、あの日々のフィルムを無理に引き出すのだ。
普段は忘れようとしているあの日々のフィルムを。


胸が苦しくなって、目が痛い。報われない恋煩いに、また、胸が苦しい。