これは…だいぶきつい状況だ。走りながら僕は思った。
なんとしてでも抜かさないと…


「田野君!田野君!がんばってー!」


僕の耳にひとつの声が届いた。

僕にはすぐに誰の声かわかった。言うまでもない。
…三藤先輩だ。

「っ!」


僕は歯をくいしばり、スピードを上げた。
今までで一番速いスピードだ。信じられないほど僕はスムーズに進んでいく。