沈黙が数分続く。

「化粧くさ。」

樹が言う。

「え、ひど。」

沈黙明けの言葉がこれか。

「臭いし、似合ってねえよ。」

続けて、ひどい言葉を浴びせられる。

「はいはい、どーせ化粧したって
可愛くないですよー!」

膨れる私。

「ち、ちげえって!
…その…あれだ。
化粧しない方が、お前はお前のままで…」

ぼそぼそと樹が言っているが、
自転車のスピードが早く、風の音もあり、
声が聞き取りづらい。

「なに?聞こえない!」

大きい声で返す。

「なんでもねえ!!」

樹は耳を真っ赤にして、大声で叫ぶと
黙ってしまった。