「お前のせいで遅刻だっつの。
早く乗れ。」

樹は自転車にまたがり、ペダルに足をかける。

「乗せてってくれるの?
ありがとー!」

私は喜んで自転車の荷台にまたがる。

「昼、メロンパン、カフェオレ
お前の奢りな。」

後悔する間もなく、
自転車は動き出していた。

「え、ちょ…。」

スピードを上げる樹。

顔に似合わず、甘いものが好きな樹。
お弁当持ってきてないんだ…。

樹のお母さんは小さい頃に亡くなり、
お父さんは仕事であまり、家に帰らないらしい。
お母さんがこの前、そんな事言ってたっけ。