「綾」
あたしをここに招き入れてくれた彼の名をためらうこともなく呼んだ。
「あいつにマーク・スティーブンに嫌なことはされてねえか?痛いところは、…なさそうだな。でも、心配なことがあったらいつでも言えよ。ほんと、お前がいなくて焦ったし、不安だったし、だけど無事解放されたって聞いてたし。どこ行ってたんだよおまえ」
…え?
ええと、いつもの心配症の綾は定番化していて、そこは健在だったけど、そこから…なんか、文句になってる?
「あ、あの…綾」
「あ?」
こ、怖い。
綾ってこんな性格だったの?
この二ヶ月でかなり変化したのかしら?
なんか、仁を真似したような俺様になっているけど…。
「…性格、変わった?」
「別に変わんねえけど」
それにしては纏う雰囲気が怖いのは何故?
「それと、みんなは?」
「翔は知らねえけど、悠人は学校だよ。ったく、和佳菜連れてくんなら、最初から休ませろよ」
「あれ、獅獣ってみんなだいたい同じ学校じゃないの?」
「悠人も例外だ。コンピュータのプログラミングができるちょっと特殊な学校に行ってる。…商業科って言ったかな」
日本にもあるのか、そういった設備とか。
アメリカに長く住むと、こういう時分からなくてもっと知識が欲しいと思ってしまうのだけど。