「えー仁さんに先越された〜」

「まじかよ、さっすが仁さん」

そんな声がどこかで聞こえるのを確かに感じながら。

「ごめん、なさい…」


あたしはみんなに謝るしかなかった。


「また、新しい思い出を作りましょうよ」

陽太が笑って言う。

「琢磨さんがなんと言おうと、俺らは和佳菜さんを守る責任がある」

「そう、かしら?」

「そうですよ。だから、ここにまた来てください。な?みんな!」

おおー!という大歓声が、あたしを包んでくれる。

こんなに気持ちが暖かくなったのは、久しぶりだ。


「おい、おまえらいい加減静かにしろ」

そんな中でも、やはり存在感があるのは。

「…仁」

あたしをここに連れてきた仁。

「行くぞ、綾にも悠人にもあってねえだろ」

そうしてまた、さっとあたしの手を掴むんだ。

「あ、仁さん。…もしかして」

「それ以上なんか言ったらぶっ殺すからな。わかるだろ、陽太」

はーい、と呑気な顔で笑った陽太とは対照的にしたを向く仁。

「ねええ、陽太ー。それ、どういうこと?」

「それは仁さんから聞いてください」

にこりと微笑む陽太に、なにも言えずに幹部室を目指した。