優しくて、したっぱの中でも1番あたしを慕っていてくれた彼は。


ほかのしたっぱ君たちが呼んでいいのか迷ってしまうあたしの名前を躊躇いなく呼んだ。

そうして、倉庫の奥からあたしをめがけて走ってくる。

「…陽太」

「和佳菜さん、…無事だったのはニュースで知ってました。でも、なかなか会いに行けなかったし、和佳菜さんもあいにきてくれなかった」

「ごめん、なさい」

「すごく心配したんですよ。連絡は取れないし、…あの男のところにいるし」

怒鳴ってはいない。

静かに淡々と。

でも、たしかに見える怒りにあたしは震えた。

こんなにもみんなを心配させて、あたしはあの場所に居たんだ。

そんな時間、本当に必要だったのかな。