謝る。
「…そう、だね。あたし、なにも言ってないものね」
そうだよ、あたしまだなにも伝えてない。
ごめんなさいの謝罪も、ありがとうの気持ちも。
合わせる顔とか、そんなことを言っている場合じゃない。
「まだ不安そうだな」
「まあ、…そうね」
不安にならない人なんているのだろうか?
みんなに認めてもらえるかの、大切な場面で緊張しない方がおかしい。
「んじゃ、お守り」
そう言って、あたしの左手をそっと取った。
「…これが?」
「そ。てか、俺がっていう方が正しくね?」
「仁があたしのお守りになってくれるの?」
赤い顔で頷く仁に、笑ってしまう。
「ふふ!なによ、それ!人がお守りなんて初めて聞いたのだけど!日本にそんな習慣があるの?」
「…ねえな」
「じゃあ、もっとおかしいじゃない」
「なんでもいいだろ」
行くぞと、赤い顔を隠して前を歩く仁が可愛く見えた。
「うん。行こうか、仁」
となりに並ぶと、ああ、と仁の笑顔を見えて、やっぱりあたしは仁の優しい笑顔が好きなんだと思った。
「戻った」
「あ、仁おかえり。あのねえ、さっき陽太がアイス買ってきてくれて……え?」
アイスを咥えた翔があたしを見て呆然としたように立ち止まった。