それでもなお、仁はその建物に向かって行こうとする。


「ねえ、仁。あたし、行けないよ」


だから、その腕を大きく引いて貴方が歩くのを邪魔をするの。

「知ってる、お前が言い訳をしてなんとか行かないように頑張っているのも、若干諦めつつあるのも」

「諦めてはいないから!」

「誰もお前が帰ってくるのを嫌がったりしねえよ」

「そう言う問題じゃないの、あたしは見せる顔がないから…」

勝手に居なくなって、たくさん迷惑をかけて。

それで普通に戻ってくるなんて、そんなこと、許されるはずがない。

みんなはとても優しい人たちだけど。

自分が、自分自身が許せない。


「申し訳ないって思ってんだろ?」

「うん」

あたしの顔を覗きこむと、ぽんぽんと軽く頭を撫でた。


「なら、謝らなきゃな」