違う、こんなふうに困らせたかったわけじゃない。
俺はただ……
「れんくんと瞳ちゃん、ケンカはダメだよ?」
なにも知らないで、俺たちの間に入ってくるな。
お前なんか……
「……お前なんか、キライだ」
絞り出したような声だった。
それでも、聞こえたらしくて、こいつはぽかんとしている。
「蓮、叶花ちゃんに謝りなさい」
なんで?
俺が、なにしたって言うんだ。
……同じか。
俺は今、理由もなしにこいつにキライだって言った。
きっと、同じ気分……
「れんくん、叶花のこと知らないから、叶花のこと嫌いなんだよ! だから、叶花と遊んだら叶花のこと、好きになるよ!」
どうしてそうなる……
「怒らないのか……?」
「怒る? どうして?」
こいつの中に、怒りという感情はないらしい。
本気で不思議そうにしている。