結斗さんはいつの間にか帰っていたらしく、叶花はオリジナルアルバムを見返していた。
「……それ、面白いか?」
「うーん。その表現はちょっと違うかなあ」
どういう意味だ。
面白いから見る、それのなにが違う。
「癒されるために見てるの」
叶花はゆっくりと一枚一枚の写真を見ている。
「その下手な写真で癒されるのか」
「下手じゃないよ。蓮くんはだんだん上手くなってる。ほら、これとかいい写真だよ」
そう言ってコスモスの写真を見せてきたが、俺にはどこがいいのかさっぱりわからない。
たしかこれは、去年の秋、学校の帰り道に撮ったやつだ。
K高校の近くにある、スポーツ公園のコスモス畑。
「手前のオレンジのあきざくらにピントを合わせて、後ろをぼかしてる。たぶん偶然だろうけど、私は結構気に入ってるの」
叶花は写真の説明をしてくれたけど、そんなことはどうでもいい。
俺は一つ、引っかかったところがある。
「……コスモス」
「あきざくら」
……なんだ、このくだらないやり取り。
わざと“あきざくら”と言ってるとわかっていながら、気になる。