すると、叶花はじっと俺の目を見ていた。
「蓮くんってば人が悪い!」
「どうしてそうなる」
「わかってて言うんだもん!」
……たしかに。
どうやら俺を見つめていたのは、俺が冗談で言ったのかを、見極めるためだったらしい。
そして日が傾いてきたということで、結斗さんを残して俺たちは病院を出た。
「……学校に行っても、さくらはいないんですよね」
こっこを送る途中、そんな独り言が聞こえた。
敬語だから、独り言じゃなかったかもしれないが。
「でも、叶花がいなくなったわけじゃない。会う場所が変わっただけだ」
「わかってます」
……じゃあ言うなよ。
「私、どんどんさくらと仲良くなれてる気がします」
その声はたしかに嬉しそうで、足取りも軽いように見えた。
それは叶花の性格が関係してくるだろう。
……いや、違うか。
上辺だけの関係じゃなくなってきたってことか。
叶花の言えないことってのは、本当に言えないことで、叶花はそれを隠してきた。
だけど、それを教えてもらえたというのは、叶花がこっこには知っててほしいと思ったからだろうし、それは本当に仲良くなりたいと思ったからだと思う。
「よかったな」
「はい。先輩には負けませんから」
なにが、と聞こうとしたけど、こっこの家に着いたらしく、聞けなかった。
俺も自宅に帰り、その日は死んだように眠った。