「じゃあ、指切りだからな」
「え、何幼稚園児みたいな事言ってるの!」
あなたには何も無くても好きな子に触れるのってすごいドキドキするし勇気がいるんだよ!分からんかい!クソ野郎!
「ほら、いいからいいから
俺はもういわゆるドタキャンをされたくないんだよ」
「あっ……」
というまもなく瑛人に手を取られあれまあれまという間に指を絡められる。
「ほら!指切りしたからな!絶対予定入れるなよ!」
前の方の席にに戻っていく瑛人の背中を見つめる。
「言われなくても何もいれないっつーの」
絶対今の私は顔赤い。
瑛人の手、ゴツゴツしてたな。
男の子の手だった。
指にやられた今日この頃。
私茉莉音は瑛人に絶賛実らない片思い中です
「はーい、では班を作ってください」
来週研修という名の合宿に行くらしい。
今日はそのグループ決め。
先輩いわくほんと研修というのはただの名で合宿なんだとか。
だから実は密かに友達と楽しみだね、って話してたりする。
「茉莉!男の子誘わなきゃだよね、誰誘う?」
そんなニヤニヤした顔で聞かないで欲しい。
絶対誰誘いたいか分かってるでしょ、友達君よ。
「あーいたいた
茉莉!ちょっとこっちあと丁度女子二人だから来ねえ?」
軽く手を振りながら近づいてきたのはまさに噂の瑛人である。
「えっと……なんで……?」
友達はニタニタした顔で後ろから視線を送ってるのがわかる。
「いや、なんでってわかんないんだけどさ……
体が勝手に動いてたんだよ」
「う、嬉しい事言ってくれるじゃん!
じゃあお邪魔しよっかな、ね?」
瑛人に顔を見られないように急いで顔を後ろにいる友達の方に向ける。
「おけ、じゃあ早く来いよ」
友達の方に駆けていく瑛人はほんのり照れて見えたのはほんとにきっと気のせい。
「よかったじゃん!」
「うん!」
勝手に、って言葉にやられた今日この頃
私茉莉音は瑛人に絶賛実らない片思い中です
「えー!そーなんだ!
瑛人くんがすきなら私も聴いてみよっかな!」
ああー、ムカつく。すごいムカつく。
いや、分かってるよ。ヤキモチ妬いたって何も変わらないって。
でもね。やっぱり勝手に耳があっちを向いちゃうんだ。
「ーい、おーい、茉莉!
聞こえてるの?!」
「う、うわあ!ごめん!聞こえてなかった!
どうしたの?」
「んもお!さっきからそればっかり!
どうせ瑛人くんと女の子が話してるのに耳傾けてるんでしょ?」
「うん……ごめんね?」
「んー、今度飴持ってきてね」
「っ、分かった……」
友達の交渉に首を縦に振りつつ瑛人の方に顔を向ける。
女の子は少し頬を染めてちょうど瑛人と別れたとこだった。
正直いって悔しいけど瑛人はモテる。
私も友達いわくモテてる方ではあるらしいけど瑛人はそんな私とでも比べ物にならないぐらいモテる。
だからヤキモチなんて日常茶飯事なんだ。
でも、今の子だけは違う。あの子はいつも、いつも瑛人に話しかけてる。
もしかしたら私もあの子と同じ立ち位置ぐらいなのかもしれない。
そう思うだけで目がじんわりと熱くなる。
「茉莉、ちょっとトイレ行ってくるね」
「5時間目遅れないようにねー」
「そんなにトイレに長居はしません!」
私と友達はいい関係を保ててると思う。
私はこれぐらいの距離感の子が好きだ。
近過ぎず、遠過ぎず。
だから世にいう連れションなんてことはしない。
たまたま一緒だったら一緒に行くけど。
「茉莉ー」
「うわぁっと、びっくりしたー
どうしたの?」
私のことを茉莉と呼ぶのは友達と瑛人ぐらい。
それ以外の子は茉莉音ちゃん、と呼ぶから
無論声をかけてきたのは瑛人である。
「いいなぁ、塩パン
俺も欲しい」
「そんなこと言われたってあげないからね?」
「ちぇっ、
塩パンといえば去年思い出すわー」
瑛人は今にも大声で笑いだしそうに口を抑えにやけを隠してる。
「うん、あれは助かったよ!
私ほんとにあの日食べれてなかったら倒れてたかもしれない」
「まぁ、それは大袈裟だけどあの塩パン見た時の麻里の顔は忘れらんないわ」
瑛人はもう我慢の限界とでも言うようにギャハハと笑い始めた。
そんな憎い笑顔までかっこよく見えてしまう私はほんとにどうかしてる。
“塩パン”は私と瑛人の関係を変えた
いや、正確にいうと私の瑛人に対する印象を変えた張本人でもある。
「いやぁ、あれがなかったら麻里とはこういう関係になってなかったんだろうなぁ」
瑛人はまだ笑いが止まらないのかお腹を抑えながらこっちに顔を向ける。
「こういう関係?」
「そう、こう、濃い関係。
いつもありがとn」
瑛人の言葉に被って予鈴が空気を読まずに大きな音で5時間目の時間を知らせる。
いや、予鈴タイミング最悪だよ。
「おっと、やべ、次移動だよな
じゃあまたあとでな」
「うん、」
はあああ。
濃い関係なんて言わないで欲しい。
期待しちゃう自分が嫌いだ。
瑛人もなんだったら心をズタズタにしてくれたら嫌いになれるかもしれないのに。
ヤキモチなんて忘れちゃうほどにキュンとした今日この頃
私茉莉音は瑛人に絶賛実らない片思い中です
『今日からしばらく学校休むわ』
「え"。」
「いや、朝からなんて声出してんの」
友達との登校中、私にこんなおっさん声を出させたのは1件のメールである。
私の感情をこんなに上下させるのなんて一人しかいないけども。
「誰からだったの?」
「えっと……」
「まぁ、どうせ瑛人くんでしょうけど」
「まぁ、うん」
さすが我が友よ。
「なんだって?」
「しばらく学校休むんだってー」
「なんでだろね?」
「うーん、今回はほんとに分からない」
そう、ほんと、に。
秘密が原因のこともあるんだけど今回は違うみたい。
なんだろ、大丈夫かな。