「無理はいけません、殿下。救うことは私の役目ですから、当然なのです。今はゆっくりと休んでください」
病人に必要なのは、栄養満点な料理と清潔な環境、そして、薬。
最悪の場合は清潔にさえしておけば、タチの悪い病気は防げる。
そのことに気づいたのが、二年前。
「高淑太妃様もですよ。お休みになられてください」
「でも、秋遠が……」
「ここにおられても構いませんから、きちんと、ご飯は食べてください。貴女が元気でいないと、秋遠様が元気になられる意味がありませんわ。お二人共、元気に仲良く長生きしてもらわないと」
秋遠様のための料理とともに持ってきた、高淑太妃のための食事。
差し出すと、それを手に取って。
「ありがとう」
と、彼女は息をついた。
「そうよね。私が元気でないと、秋遠をいざという時に守ってあげられないわ」
「そうです。その調子です」
翠蓮は高淑太妃が食事する様を見ながら、殿下にも食事の手ほどきをする。
ゆっくりと彼が嚥下していく様を見ながら、
(黒幕は……)
今の後宮の立場を、考えた。
黒幕は間違いなく、後宮をねぐらにしている。
後宮を違う方面から見ればきっと、それが、この事件の黒幕へと導くだろう。