―栄貴妃様の前を辞した後、翠蓮は秋遠様の様子を見るために、宵影閣へ立ち寄った。


最初の頃と比べると、秋遠様もそれなりの回復を果たしているが―……まだ、麻痺が残っているらしく。


一人で起き上がるのはまだ困難な感じで、高淑太妃の手を借りて、漸く、起き上がれるという感じだ。


「翠玉様……」


―淑秋遠。御歳、十九。


精悍な面差しはやつれてしまい、目の光はまだ少し弱い。


「ありがとう、ございます。翠玉様」


「様だなんて。やめて下さいと、言ったではありませんか」


「でも、口もきけなかったのに……」


「フフッ、口をきけるようになられただけ、進歩ですよ。頑張りましたね、秋遠様」


翠蓮の微笑みに、義理堅い秋遠様は


「本当に……なんと、お礼を申し上げたら……ゲホゲホッ」


と言いながら、咳き込んで、突っ伏す。


「秋遠!」


高淑太妃の心配する声に、やんわりと微笑む殿下。


翠蓮は彼の肩に触れ、そっと、褥に押し返す。