「幻芳珠……か」
玉林さん達に使われていた毒は、そこまで重いものではなかった。
否、普通に毒草ではあるのだが、幻芳珠のようなほど、危険なものではなかったのだ。
そもそも、幻芳珠は本来需要性が少ない。
それなのに、幻芳珠が後宮で流行している。
幻芳珠はとある植物の一部分だが、その植物を育てるのも特殊な条件がある。
そんな栽培条件にあった、栽培場所がある。
しかも、そうきっと、この後宮の何処かに。
「―恨みの渦巻く後宮で、何があるかは分からない。苦労をかけるけど、どうか、皆をよろしくね。翠玉」
考え込んでいると、栄貴妃がそう言った。
「これ以上、犠牲は出したくないの」
……彼女の為にも、黒幕を見つけなければ。
妃の死をとめられない責任は、全て、彼女に、栄貴妃に向かうから。
(だから―……)
『黎祥様を、お救い下さい……』
(嵐雪さん、もう少しだけ、時間をください)
栄貴妃様はそう優しい微笑み。
徐に、翠蓮の手は握られて。
翠蓮は笑った。
この可愛い人を、必ず、守るのだと思いながら。
「お任せ下さい」
死なせてたまるものか。
これ以上……無駄な死人で、この後宮を汚すものか。
黎祥の後宮で、人を死なせるものか。