「……倒れられたり、身罷られたのは、陛下の妃達と御兄弟、そして、その母のような存在のお妃様方……」


「最近では、向淑妃や蘇貴太妃もお倒れになられたわ。翠玉も呼び寄せられたとは思うけれど」


呼び寄せられたけど、二人自身の拒絶で、身体は見てはいない。


太医でなければ嫌だと、彼女達自身が訴えたからだ。


まぁ、特にそのことに傷つきもしないし、今まで自然に任せてくれている皇族の方々の気楽さに戸惑っていたくらいだから、そういう人種がいてくれてほっとしている部分もある。


「向淑妃はどのような女性ですか?」


「……皇帝陛下を恋慕って、入宮してきたと言われている妃よ。そういう妃は数人いるのだけど……高慢な、女性ね」


顔の皮、一枚の下では、何を考えているかはわからない。


だから、後宮は恐ろしい。


「離れだから、今の状況ははっきりとわからないけれど……蘇貴太妃もきっと、寝込んでいらっしゃると思うわ。玉林たちとは少し違う、秋遠様と同じような症状を訴えているらしいから―……」


蘇貴太妃というのは、柳皇太后の次に先々帝の後宮で身分の高かった女性。


そして、第二皇子である流雲公子の御母堂だ。


本来は、一番寵愛された黎祥の母がついているはずの地位だったが、彼女は追放されたから……そして、その先で亡くなってしまったから、貴太妃の地位には彼女が座っていると、嵐雪さんに聞いた。