「ほら、やっぱり泣いた」
「だって……こんなの聞いてない」
肩を震わせ涙を流す私に彼は眉を下げ笑った。
「……でも、これでようやくあいつとの約束も果たせたな」
「約束?」
「うん。俺さ、櫻井と約束してたんだ。いつか立ち直った君にこのDVDを見せるって。優が大きくなったら、今度は海愛ちゃんの決断で優にDVDを見せるかどうか決めればいいよ」
彼の言葉に私は力強く首を縦に振った。
「そうする」
久しぶりに見た最愛の彼は、画面の中で時が止まったまま、幸せそうに微笑んでいた。
「ありがとうね、陸くん」
「いえいえ。ほら、涙拭いて」
涙を流す私を優しく見守ってくれる夫。
そんな私の背後で突然、物音がした。驚き振り向くと、そこには寝ぼけ眼を擦る優の姿があった。私の泣き顔にギョッとした表情を浮かべ、優は心配そうに言った。
「ママ、どうしたの? どこか痛いの?」
今にも泣き出しそうな表情を浮かべる息子の姿に、私は微笑みながら両手を広げた。
「大丈夫よ……優、おいで」
重くなった息子を抱き上げながら、私はテレビの電源を切った。
この映像は、優が大きくなった時、真実を受け入れられるようになった時、成長した息子に見せようと思う。優しくて、最期まで強い心を持った、彼の父親の話を交えながら。
私は自分に誓いを立てた。
もうすぐ、桜の咲く季節がやってくる。