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【えっと、この映像を見てるってことは、もう僕はそこにいないんだな……初めまして、優。お父さんです。今はまだお母さんのお腹の中だけど、今はどれくらい大きくなったのかな。見たかったなあ……お前の成長を、僕は一番近くで見ていたかった。死ぬ前に一度、お前に「お父さん」と呼ばれたかったよ。お父さんのような弱い体で生まれていないか、それが一番心配だけれど、お母さんの子だからあまり心配するものでもないか。お前は僕が生きた何倍も長く生きて、沢山のことを経験するんだぞ。そして、いつか僕に沢山の思い出話を聞かせてくれ。お母さんを大切にな。最後に、優、お父さんとお母さんのところに生まれてきてくれて、ありがとう。愛してるよ。



 海愛。僕と出会ってくれて本当にありがとう。君をおいて逝ったことをどうか許してほしい。君に出会って僕は人を愛する気持ちを知った。ツラいことも大変なことも沢山あったけど、僕は生まれてきたことを後悔していないよ。君と過ごした時間は僕にとってかけがえのない宝物です。君と籍を入れてあげられなかったのは、本当に申しわけなく思ってるよ。でも、例え紙面でも約束がなくても、君は僕にとって大切な、生涯一人の奥さんだ。



 優を授かったこと、本当に君と神様に感謝してる。僕を父親にしてくれてありがとう。



 それから、ツラい時は思いっきり泣いていいんだからな。泣いたらまた笑えばいい。僕はどんな君だって愛しているから。だから、しっかり前を向いて歩け。後悔だけはしない生き方をして。僕に縛られず、自分の思ったように自由に生きてくれ。言葉じゃうまく伝えられないけど、僕は君を心から愛しています……って、なに泣いてるんだ那音】



【うるせ……バカ。切るぞ】



【ああ。ありがとう那音】



 そこで映像が終了した。

 リビングのソファで映像を見ていた私は、彼の予想通り大粒の涙を浮かべていた。