*   *   *





 時は遡さかのぼり、七年と少し前。

 那音は蓮が入院したという知らせを聞き、見舞いに訪れていた。





「ほら、持ってきたぞ、コレ」





「ありがとう」





 那音は蓮に「ビデオカメラを持ってきて欲しい」と頼まれていた。



 お礼を言った蓮はそのままベッドに深く沈み込む。





「あのさ……那音、お前に頼みごとがあるんだけど」





「なんだよ」





「ソレで僕のことを撮ってくれないか」





 蓮は那音が手に持っていたビデオカメラを指差しながら言った。





「もうすぐ生まれてくる子供のために、映像を残しておきたいんだよ」





 穏やかな笑顔を浮かべる蓮の姿に那音は返す言葉が見つからなかった。





「……分かった。じゃあ、撮るぞ」





「ああ、頼む」





 そうして録画ボタンが押された。