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桃色のカーテン。お気に入りのぬいぐるみが沢山置かれたベッド。部屋の中央にある紺色のソファは自宅から持ってきたお古。ここは私、鈴葉海愛の部屋。昼時のテレビを見ながら、私はソファに座り大きな溜息をついた。
バイトは体調不良を理由に休んでしまった。体が重い。微熱が続き、吐き気が止まらない。
私は最愛の人に連絡をしようとしたが、その手は携帯電話を持ったまま止まった。
思い当たる理由が完全にない、と言えば嘘になる。しかしこれは、いくら考えても私一人ではどうすることもできない問題だった。
このままではいけない。そう思い、真偽を確かめるために行動を起こしたのが数十分前。現在、私は信じがたい現実に直面している。嫌な予感は当たってしまうものだ。
「妊娠してるって……嘘でしょ?」
私は陽性を示す検査薬を握り締め、青ざめた。まだなんの変化も見られないお腹を撫で、私は考えた。検査薬の結果を鵜呑みにしてはいけない。一度、病院で見てもらったほうがいい。
思えば生理がこなくなってから三か月が経過していた。蓮と最後に関係を持ったのはいつだっただろうか。
大学を卒業し、お互い新しい環境に馴染みはじめた頃だった。
完全な避妊は存在しない。以前友人から言われたその言葉を思い出し、私は頭を抱えた。
本当なら、今すぐにでも蓮に連絡し、一緒に真実を確かめたい。けれど、私はこの事態を蓮に伝えるかどうか迷っていた。
子供は大好き。蓮との間に宿った新しい命が本当に私の中に存在しているのなら、命に代えても生みたい。私の決断を、蓮は受け止めてくれるのだろうか。少ない余命に苦しむ蓮に、問題を受け入れてくれるゆとりはあるのだろうか。彼の邪魔にだけはなりたくない。
伝えて、もし拒絶されたら……私はどうするのだろう。
考えても、時間は過ぎていくばかり。電話で話すのは、他愛のないことばかりだった。