「ごめんね、本当に今まで、ツラい思いをさせて、ごめん」





 謝罪の言葉を述べる俺に、彼女は言った。





「ううん。私こそ、ごめんなさい」





「え?」





 謝られることなど想定していなかった俺は、首を傾げた。





「私、神谷くんのことなにも知らなかった。本当にごめんなさい」





「海愛ちゃんが謝る必要なんてないよ! 俺が君と櫻井を引き離そうとしたのは紛れもない事実なんだから」





「でも、神谷くんにも理由があったじゃない。私がなにも知らなかったから、神谷くんを傷つけた。それを謝りたいの」





「海愛ちゃん……」





 彼女の言葉に胸が熱くなった。本来なら罵ののしられ、このまま縁を切られてもおかしくないはずなのに。彼女は俺を傷つけたことを謝罪した。世の中にはこんなにも純粋で、優しい人間がいるのかと俺は驚き、感心した。





「俺はなにも怒ってないよ。むしろ感謝してる。こんな俺を……こんな俺にまで、優しくしてくれてありがとう」





 彼女との会話は、過去に空いてしまった心の傷を癒していくようだった。